筋骨格を診るにも、広く一般的に行われている方法では足りないものがあります。
そして単純に筋骨格のみを扱うのではなく、もっと人間を構成する要素をトータルで診ていこう、というコンセプトです。
具体的に伝えたい内容としては、
1.まず筋肉について
多くの場合、緊張している筋肉をほぐしていく、というアプローチを選択すると思います。
当会では、筋肉に対してアプローチを行う場合、緊張している筋よりも弱化している筋にフォーカスを当てます。
筋肉が緊張を強いられるのは、弱化して働いていない筋の代償として緊張が起こる場合がほとんどだからです。
また、筋肉が弱化して使われなくなることで、その筋そのものが伸ばされて固まった状態(伸長固定)にもなってしまいます。
これらの理由から考えるに、緊張をほぐすのみでは結果に対してアプローチしているだけであり、原因へのアプローチになっていません。
それでは延々、緊張を落としては時間が経って元に戻り、緊張を落としては時間が経って元に戻りのいたちごっこになります。
筋肉同士がどう関連しあっているのか、どこが弱ればどこが硬くなるのか、また個々の筋肉そのものの性質についてもお話ししていきたいと思っています。
2.関節・骨格について
関節においては可動性(モビリティ)にアプローチする前に、ニュートラルなポジションに矯正することが必要です。
いわゆる、歪みを整えるわけです。
当会において、臨床の中で最も重要視する部分でもあります。
歪みを整えることにより、血流・リンパ流・脳脊髄液・経絡など、身体の流れが改善され、自己治癒力が高まります。
歪みを無視したまま、モビリティのみにアプローチしても、時間が経てば元に戻ります。
まず関節をニュートラルな状態に持っていく→動きの悪い関節に対してはモビリティを出していく、という手順を踏む必要があります。
また歪みは多くの場合、筋のインバランスから起こります。
先ほどの筋肉の話にも繋がってきますが、筋肉同士のバランスを整えてあげれば関節の変位も矯正されますし、逆もまたしかり、変位の矯正により筋のインバランスも改善されてきます。
ここでは主に、関節の変位が身体にどう影響するか、歪みの矯正にはどういうアプローチを用いるかなどお伝えします。
3.内臓や脳といった内部環境について
ここが一番伝えたい部分でもあります。
筋肉や骨格と、身体の内部環境を切り離して考えがちですが、実は密接な繋がりがあります。
各臓器にはそれぞれ関連している筋肉や椎骨があります。
もし表面に出ている筋骨格の問題が、実は内部環境が原因で起こっているとしたら、筋骨格のみに対するアプローチは徒労に終わります。
ここでは各臓器と、筋骨格系の繋がりを解説し、内部環境に対するアプローチ法を紹介します。
4.身体力学と神経科学
人が地球上で生活する上で考えなければならないこと、それは外力の存在です。
身体の調整を行っていき、動作の学習を促していく時にはこの外力や内力がどう身体に影響を及ぼすのかを知らなけばなりません。
また、ひとえに『学習』とは言いましても、どのような方法で動作を獲得するかで、日常生活に生きてくるのか、はたまた意識しなけれ
ば使えない動作になるのかも変わってきます。
力学に加えて中枢神経系、環境への適応などもお伝えしていきます。リハの現場では必須の知識をお伝えします!
まとめ
伝えたいことは他にも沢山ありますが、いっぺんに喋ると混乱を招くので、まずはこのあたりを中心に講義をさせていただきます。
講習会で紹介するテクニックはあくまで参考であり、そのままをやる必要はありません。
重要なのは、原理原則を理解することです。
そこを理解できていれば、如何様にも応用が効きます。
自分の中で知識を消化し、自分の臨床の中で活かせるようにアレンジして下さい。
講習会を受けて、自分の臨床の力に変えれるかどうかはそこにかかっています。
当講習会で紹介する技術は簡便ではありますが、「ポイントを押さえて極めていけば、相当な効果があるテクニック」となっています。
誰がやっても効果がありますが、精度が上がれば上がるほど、その効果はより深くなり、全身性に波及していくのです。
そしてテクニックを学ぶ前にご理解いただきたいのは、当会の施術コンセプトの真髄は、患者さんの自己治癒力を引き出すというところにあります。
患者さんに治る力を取り戻していただく、身体が回復するサポートをさせていただく、という思想が根底にあります。
さいごに
施術において結果が出せる、患者さんに感謝して頂けることで、セラピスト自身の仕事が楽しくなり、人生が楽しくなります。
患者さんの幸せに貢献することでセラピスト自身にも幸せになって頂きたいなと思います。
自分が幸せ⇔相手が幸せ、という双方向性の共存共栄関係ができることが一番ではないでしょうか。
双方向性なわけですから、自分が幸せでなかったら患者さんを幸せにすることもできないと思います。
患者さんのために一生懸命頑張るのは良いことですが、自らの心や身体の健康を害するほど追い込んではいけません。
自己犠牲は美徳のようですが、自分が苦しいと患者さんにも伝わってしまいます。
患者さんに、逆に自分の健康を心配された方も多いと思いますし、私もそうでした。
何より不調が臨界点を超えてしまい、仕事を休むような事があれば、一番困るのは担当している患者さんです。
自分を大切にしながら、より良いセラピストになっていけるよう研鑽し、患者さんと共に幸せになっていける、それが理想であると考えます。
当会は、そんなセラピストを応援していける会でありたいと思います。
引用:臨床研究会愛媛祭